2016年9月10日開業!

広島お好み焼の歴史

戦争で食料が不足した戦後に、少量の小麦粉と野菜を多く使用して作られるようになり、お好み焼きと称されたのが始まりであるが、戦前に子供のおやつだった「一銭洋食」が元の形になっている。お好み焼店は広島県内には1,700軒以上あるといわれる。1950年頃に発生した屋台街で開業した、みっちゃんの井畝井三男と善さんの中村善二郎が広島風お好み焼きの元祖と言われている。その他、初期のお好み焼きの屋台の流れをくむ店は「麗ちゃん」、「へんくつや」などがある。1950年当時のお好み焼きはネギ焼き近い物であった。

広島お好み焼の作り方

広島風お好み焼きの焼き方は、昔から今まで一貫して生地と具材を混ぜずに焼く「重ね焼き」である。当初は、肉が入っていない野菜の重ね焼きで、二つ折りにして新聞紙にくるんで提供されていた。キャベツや揚げ玉などが入れられていたが、この頃はまだ、そば等の麺は入れられていなかった。このクレープのような生地に、焼きそばやうどんと卵焼きを二つ折りにして挟むというスタイルは現在でも呉地方を中心に残っており「呉焼き」とも呼ばれている。戦後の食料事情により、季節により供給量が左右されるネギを、単価が安く年間通して手に入りやすいキャベツに変えた(もやしは後年入れられる事になる)。昭和30年代になると、そば(中華めん)やうどんを入れるようになる。当初おやつ程度の物だったのが、主食に変化していった。具材が多くなったため、二つ折りにしにくくなり、円盤状のままで出すようになった。こうして、1955年頃には現在の広島風お好み焼きになった。このように、現在のような広島風お好み焼きの完成形が突然出来たわけではない。当初は屋台営業の為、他店のレシピ調理技術が盗み易く、各店が互いに影響を与えあいながら現在の形へと進化させていった。

広島お好み焼の味付け

広島風お好み焼きも、最初の頃はウスターソースを使っていた。多くなった具に対応するために、そばを焼そばのようにソースで味付け、さらに表面にも塗っていた時期もあった。しかし、さらさらのウスターソースではお好み焼にしみ込んでしまう欠点があり、ウスターソースに片栗粉を入れてとろみのあるソースを作って欲しいというオーダーにソースメーカーが応えて、濃厚なソースを使うようになった。その後、広島風お好み焼きの生地や具材に合うように甘味や酸味を持たせたり、液体のソース製造時の沈殿液を使うなどの改良がなされた。こうして誕生したお好み焼き用の濃厚ソースを「お好みソース」と呼ぶようになったが、小さな工場では昔ながらの製法で作っている所もある。広島県内のみならず、全国でもオタフクソースが高いシェアを誇っている。

調理法

小麦粉を水で溶いたものを薄く伸ばして焼いた生地の上に野菜や肉といった具を重ねてひっくり返し、生地でふたをして「蒸し焼き」にするのが特徴。具と小麦粉で出来た生地を混ぜて作る関西風の「混ぜ焼き」との大きな違いとなっている。

  1. 水で溶いた小麦粉を円形に薄く伸ばして生地を焼く。
  2. 生地の上に魚粉、キャベツ、その上に肉とその他のトッピングや天かす等を乗せ、つなぎとして少量の小麦粉を垂らしてひっくり返し、生地を蓋として具材を蒸し焼きにする。
  3. 生地を上にしたまま、炒めた中華麺(またはうどん)に乗せる。
  4. 卵を割って円形に伸ばし、その上に生地を上にしたまま本体を乗せる。(黄身は割るが伸ばすだけ)
  5. ひっくり返して卵の面を上にし、ソース、青のり等をかけて完成。

主な材料

基本の材料
  • 小麦粉・水(小麦粉の代わりに山芋をすりおろしたものを使用することも可能であり、こだわりのお店では山芋を使用することもあるが、一般には小麦粉を使用する)
  • 鶏卵
  • 中華麺またはうどん
  • 豚肉(バラ肉等のスライス)。豚肉の代わりに牛肉、ホルモン焼きなどもある。
  • 野菜 – キャベツ、もやし、ネギ等
主なトッピング

広島のお好み焼きには、定番の具材がある。

  • イカ、エビ、モチ、チーズ、カキ、コーン、イカ天、青ネギ、牛すじ、タコ、キムチ、ベーコン、鶏肉、きのこなど。

チーズやネギはキャベツと混ぜて使用することもある。

主な調味料等

お好み焼きに使用される麺は中華麺で、多くはお好み焼き用に製麺されたものが使用されることが多いが、焼きそば用の麺が使用されている店もある。店舗によって寸胴でゆでてから鉄板に出す「生麺」、予めゆでてある「ゆで麺」、蒸してある「蒸し麺」の3種類のうち一種類が使用される。3種類の中では生麺が比較的人気で、お好み広場やお好み村の店舗やガイドブック等に掲載されているような店舗では生麺が使用されることが多い。しかし、生麺を焼く時に使用するラードのカロリーを気にしたり、調理時間が長くかかることで、人気店でもゆで麺や蒸し麺を使っている場合もある。[18]

中華麺に代わるバリエーションとしてうどんがあり、うどんは中華麺がない時などに、古くから代用されてきた。近年では蕎麦パスタを用いる店舗もある。

広島以外では、上記のような麺入りのお好み焼きを関西風の「モダン焼き」と区別する意味も込め、「広島焼き」と呼ばれることがある。当地の広島で名付けられたわけではなく、広島では、ほぼ使われることがない呼び方である。広島において広島風のお好み焼きのことは、関西同様に「お好み焼き」あるいは「お好み」と呼んでいる。ただし、広島県三原市では、旧来の麺無しをベースとして「お好み焼き」と呼び、中華麺またはうどん入りを「モダン焼き」と呼んでいる。

ソース

オタフクソース

ソースは広島のメーカーであるオタフクソースがお好み焼き専用のソースを製造し、お好み焼き店の開業を支援していることもあり、多く利用されている。味は若干甘め。それ以外には、毛利醸造のカープソース(やや辛め)・サンフーズミツワソースセンナリ広島ぢゃけん中間醸造三原市)のテングソースなどのお好み焼きの専用ソースも使用されている。

多くのお好み焼き店では単一メーカーのソースを使用しており、ソース会社では、納入先のお好み焼き店に自社の名前が入った暖簾を提供している。そのため、暖簾にあるメーカー名を見ることで、その店がどのメーカーのソースを使っているか分かることが多い。近年では(のぼり)を立てている店も多く、より分かりやすくなっている。なお、一部の店では複数のソースを独自にブレンドしたり、前記以外の製造会社にソースを特注したりしている。

また、お好み焼きを食べるときに用いるヘラ (コテ) やお皿、ソース差しなどの道具にも、ソースのメーカー名がついていることがある。特に、多くの小規模な店舗がある広島市内では、ソース会社がお好み焼き店の開業支援をしており、「近所の主婦」が内職で自宅の一部を改装し、安価で店を開くことが出来た。

広島県は日本酒の産地であり、そこから派生しての製造も盛んであった。先述のオタフクなど多くのソースメーカーは酢の醸造会社をルーツに持ち、今もソースと酢の両方を製造している。

マヨネーズ

広島では、当初お好み焼きにマヨネーズを使う習慣はなかったが、マヨネーズをかける食べ方も広がっている。

お好み焼きにマヨネーズを提供している店であっても、焼き上がって客に提供された時点ではマヨネーズがかけられていないことも多い。このような店では、卓上にセルフサービス用のマヨネーズが置いてあり、客が好みに応じてマヨネーズを使えるようにしている。

注文方法

広島のお店の注文書(メニュー)には「お好み焼き そば (うどん) 肉 玉子」という風に書いてあることもあるが、これを「肉玉そば (うどん) 入り」「そば (うどん) 肉玉」、などと注文する。デフォルトである肉玉そば(うどん)にお好みでトッピングを付加したり、そば(うどん)抜きなどとすることも可能である。おすすめや人気のトッピングの組み合わせは「餅チーズ・肉玉そば(うどん)入り」などとメニューに併記したり、「スペシャル焼き」「○○ちゃん焼き」などと店舗独自の名前を付けていることもある。

そば (うどん) の下に「W」と書いてあることがあるが、これはそば(うどん)を2玉使う「ダブル」という意味である。 「ちゃんぽん」または「ミックス」いう言葉が使われている地域もあり、そばとうどんを半玉ずつ使用することを意味している。またミックスダブル等の呼び名もありこれはそばとうどんを1玉ずつ使うことを意味している。

多くの店舗ではテイクアウトも可能であり、店舗によっては出前や電話予約などを行っていることもある。近年では海外からの観光客のため英文のメニューを用意している店舗もある。

食べ方

典型的な広島風お好み焼きの店は、真ん中に大きな鉄板を擁するテーブルがあり、その周辺にいくつか小さめのテーブルが配置されていることが多い。客はお好み焼きを作る大きな鉄板の周りに座り、焼かれたお好み焼きを鉄板の上から直接小型のヘラを使って食べるのが基本である。

しかし、このような大きな鉄板のあるテーブルは店に一つしかないことが多く、鉄板で同時に食べられる人数には限界がある。そのため、店の中には鉄板のない小さいテーブルも配置されており、鉄板で食べない場合はお好み焼きを皿にのせてもらい、箸で食べる。

歴史的には、昔からある広島のお好み焼き店は自宅を改装したようなところも多く、規模が小さい店が多かった。鉄板の周りにしか席がないような狭い店では、必然的に客は鉄板の上で食べるしかなかった。

食べている間に冷めるのを防ぎ、最後まで焼きたての味を楽しむため、また、屋台発祥の店では、皿をわざわざ洗うための水を節約するために客に鉄板で食べさせ洗い物をなくすという理由や、物が豊かではない時代に割り箸の消費量を減らすという理由もあり、ヘラで食べるようにしたところ、これが功を奏し慣習となったとされている。近年では大きめの店が増えテーブル席が増えたことや、ヘラで食べるのは多少慣れが必要で観光客や女性には扱いが難しいこともあり、皿で出す店や出す前に皿か鉄板を聞く店も多くなった。鉄板で出す場合も小皿や箸を用意し、卓上のソース等をお好みで自由に使えるようになっている店舗が多い。

地域差

#その他の地域のお好み焼き#中国地方も参照

同じ広島県内であっても、地域によって色々なバリエーションがある。これらは定番というものではなく、お好み焼きのメニューの一つとして提供されるものである。  特に近年、「ひろしまフードフェスティバル」で「てっぱんグランプリ」を開催して競う傾向にあるため、年々進化しつつある。

福山市など岡山県境に近い広島県東部 (備後地域) では、近畿圏にも近いことから関西風のお好み焼き店が多い。備後地域では関西風のお好み焼きがもともと主流であったところに、後から広島風のお好み焼きが浸透していった。なお、この地域ではお店によって変わった具を入れる所がある。 府中市では、豚バラ肉の代わりにミンチ肉や細切れ肉を入れ、「府中焼き」と呼ぶ。地場産業の家具桐箱製造業で働く母親が多く、お好み焼きは子どものおやつや晩ご飯だったため、子どもがお小遣いで食べられるようにと、バラ肉ではなく安い合い挽き肉を使ったのが始まりである。ミンチ肉は細かいため熱を通すとよくダシが出てうま味が増し、脂も多く出て麺がカリッと焼き上がるのが特徴。また、卵も溶き卵にしたものをソースを塗ったお好み焼きの上からかけて仕上げる方法も存在する。狭い鉄板でたくさん焼けるようにという工夫から、形は楕円形をしている。 尾道市では砂ズリ(砂肝)を入れる店がある。 三原市では、モツ (鶏のレバーやヒモ) を入れる店が市内全体(約80店舗)のうち7割でトッピングとして取り扱いがある。三原市は養鶏が盛んで、鶏肉の生産量は広島県全体の約半数(46%)を占めており、広島県の地域資源にも認定されている。昔から安価で新鮮な鳥モツが容易に手に入れることが可能だったため地域に根付いた。また、そばやうどんを入れたお好み焼きを特に「モダン焼き」と呼び分けるが、これは関西地方独特の呼び方で、広島県内で広島風のお好み焼きを出している地域ではあまり見られない特徴。戦前、戦後から三原市の産業基板を築いていた「帝人」や「三菱」では、当時から関連企業の仕事で関西からの来客も多かったと思われ、関西での呼称である「モダン焼」と注文を受けることが多く定着したという見方がされる。 竹原市では、生地に酒粕と日本酒を練り込んだ「竹原焼き」を提供する。 呉市ではうどんを入れたり、普通に焼いた後、半分に折り半月型にする場合が多いといった特徴がある。 庄原市は、広島市から離れている事もあってお好み焼きは馴染みの薄いものだったが、近年町おこしの一環として、「庄原焼き」を考案。そばではなく、庄原産の米を入れてポン酢で仕上げているのが特徴。

2014年の「第5回てっぱんグランプリ」に出展された地域の産物を使用した最新のご当地お好み焼きは以下の通り[19]

  1. 三原市「三原焼き」は、三原で人気の鳥モツ入り。
  2. 世羅町「せらの恵み焼き」は、トマト、大葉、チーズ入り。
  3. 神石高原町「神石高原焼き」は、神石牛、こんにゃく麺入り、トマトソースを使用。
  4. 三次市「三次唐麺焼き」は、ピリからの赤い色麺「唐麺」とカープソースを使用。
  5. 呉市「呉焼き」は、細うどんを使用し卵でとじて半月状に折る。
  6. 広島市「広島生めんお好み焼き」は、茹でて焼きパリっとさせたお好み焼き用の麺とチーズ入り
  7. 尾道市「尾道焼き」は、砂ずり、いか天、わけぎ入りで、尾道オリジナルソース使用。
  8. 廿日市市「はつかいち牡蠣盛焼」は、廿日市産の牡蠣と大葉入り。